薬の町・道修町と神農さん
講師:少彦名神社 宮司 別所俊顕
日時:1998年9月9日(水曜日) 午後6時〜8時半
会場 :
少彦名神社 3階ホール  

(ページ : 3/4)

 江戸時代に町人と呼ばれていた人は、土地と家を持って公的義務、権利がある人、それ以外は借家人と呼ばれ公的義務はありませんでした。公的義務とは、幕府の指導従い行う公役と、町の運営を取り仕切る町(丁)役があり、役人は年寄りとか月行事があたりました



 雇員は、町の事務を行う町代、町代下役は町役の助手で、江戸時代には町と町の間に泥棒が入らないように夜警を担当する夜番、垣外番や髪結いを雇う費用は町人が、負担していました。借家人が負担することはありませんでした。
 大阪の町は、自治組織ですから、町から惣会所、そして奉行所に書類や諸届が回されました。惣会所も月番で、「北組」「南組」「天満組」と変わっていました。

神社の古文書が語る江戸時代から続く慣習と利権
道修町には、薬種仲買人仲間がおり、株仲間としての独自の運営方法もありました。株仲間は、相撲の年寄り株と同じで、ほしくてもなかなか入らなかったようです。享保7年に、幕末まで大体124人体制が続きました。 株の売買は、江戸では金相場でしたが、大阪は銀相場でしたので銀2貫目(金30〜40両)が加入金で、入用費という年会費が銀5貫5百匁(金80〜90両)が必要でした。
 晴れて株仲間になるとお披露目するのですが、振舞い金といわれお酒を飲ましたり、飲ます変わりにお金を包んだりと大層な物入りでした。それらの多額の費用を払っても、株仲間には商売上の利権があったのでしょう。
 江戸時代には、互酬慣行と謂われ、現在の賄賂がごくごく普通に行われていたようです。
 面白い例では、「虫干しの見回り礼銀」があました。今よりも狭い道修町の通りに、向いあった店が生薬などを虫干しするのですが、人が一人しか通る程しかない中を、町目付けである同心が見回りに来ると、銀五両を払いお目こぼししてもらい、「薬を干すなら、通りを隔てた南北で交代に干しなさい」と指導を受けた内容が、道修町3丁目町代日記、道修町三丁目会所文書に以下のように記されていました。

                 右上へ →

 「町目付芝右衛門殿松岡常右衛門殿へ銀五両宛道修町三町より遣し申候、此儀ハ虫ほし右三町惣薬種中より参り申候、則道壱仁兵衛殿同弐丁目次平治殿私者同道致申候、右虫干為見廻、則持参致申候、四月二日」
「口上 此説家々ニ薬種虫干破致候、例年申触候通、片側干ニいたし往来之不成様に互ニ破申合、隈りニ無之様ニ可破成候、尤薬種其ニて被出し申候諸士方御通り之節ハ不及申、往来之人ニ不念無様ニ可被申付候、右之通り念入申様被仰渡候間、末々之者も申付不作法無之様ニ可被成候、以上」

また、諸書物取纏控帳には、「天保四癸巳年 当年は米作西国は大躰の出来候得共、東国北国殊の外凶作ニ付、米相庭大意ニ引き上がり、夫ニ付麦も百廿匁、米は黒米ニテ百三十匁の直段出候ニ付、市中一統大意ニ六ケ数、中間も一統に相談いたし倹約の申合出来候て、祝儀不祝儀共音物やりとりなしと申合相堅メ申候位の年柄ニ付、(下段)」とあり、米が値上がりしているので、倹約のため祝儀不祝儀のやりとりはやめましょうと書いています。


饅頭引換券もあった役人への賄賂や様々な物品贈与
 現物は、「道修町資料保存会」が管理しており、これを読むとかなりの額の賄賂を出したことが明記されています。当時、株中間は薬種だけではなかったので、大阪の侍の石高はたいしたことがなくても、町人から多額の贈り物を受け取りっていたのでしょう。更に、贈り物には、現金だけではなく、様々な物品を贈っていたようです。
 当時は、この神社には専属の神主が居なかったので、森の宮からお祭の時だけ神主が来ていました。祭りの時の立会い役人に、饅頭50個贈った記入されています。饅頭50個を役人に贈っても一度には食べられませんが、当時は「切手制度」がありました。今でいう商品券みたいなもので「饅頭引き換え券」を贈っていました。
 町奉行所や、三郷惣会所、町内、祭礼、上納や、大和川が氾濫した時などの災害見舞金を道修町からも出すようにと幕府より申し出があり、施行と謂って払っていたようです。
 
また、祭礼では、この神社はもとより、住吉神社や、座間神社、一心寺、四天王寺等のご開帳や祭礼にお金を出していました。ですから、江戸時代は民活しており、幕府は余りお金を出していなかったのではないかなぁと思います。
 特に大阪の橋は数本の公儀橋以外は、殆どが町や有力は商人が橋を掛けていました。また、当時の交通輸送は船でしたから、船が沈むと、難船お助けと称して、寄付を募りました。道修町の薬も東横堀などを通って船が往来していましのたで、船の事故にはお金を出しています。


 


次のページへ進む
『概要報告』のページに戻る